にいたころとは反対である。私が友だちのところを巡ったのも幾分そんな気持に似たところがあった。眼帯など掛けたことのない俺が掛けているのを見ると、みんなびっくりしたり、珍しがったりして色々のことを訊くに違いない――と。たあいもないことであるが、我ながら眼帯を掛けた自分の姿が珍しかったのだ。
友人たちは案の条珍しがって色々のことを訊いた。
「おい、どうしたい。眼帯なんか掛けて、ははあまた雨を降らせるつもりだな」
「うん? 充血した。そいつあいけない。大事にしろよ。盲目になるから」
「はははは、いい修業さ」「そろそろいかれ[#「いかれ」に傍点]始めたかな。もうそうなりゃしめたもんだ。確実に盲目《めくら》になるからな。今のうちに杖の用意をしとくんだなあ。俺、不自由舎に識り合いがあるから一本貰って来てやっても良いよ」
みんなはそんな風なことをいって、私をおどかしたり笑ったりした。私はわざと大げさに悲観している風を見せたり、盲目、そんなもの平気だ、と大きなことをいったりした。しかし内心やはり憂鬱で不安でならなかった。そして片眼を覆うということがいかに不快極まるものであるかを思い知らされたの
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