眼帯記
北條民雄
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)夜|更《ふか》ししてしまったのだ
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)夜|更《ふか》ししてしまったのだ
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、底本のページと行数)
(例)そろそろいかれ[#「いかれ」に傍点]始めたかな
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ある朝、眼をさましてみると、何が重たいものが眼玉の上に載せられているような感じがして、球を左右に動かせると、瞼の中でひどい鈍痛がする。私は思いあたることがあったので、はっとして眼を開いてみたが、ものの十秒と開いていることができなかった。曇った朝、まだ早くだったので、光線は柔らかみをもっているはずだったのに、私の眼は鋭い刃物を突きさされたような痛みを覚えるのだ。眼をつぶったまま、充血だな、と思いながら床の中で二十分ほどもじっとしていた。部屋の者はみな起き上がっていたが、私は不安がいっぱい拡がって来るので起きる気がしなかったのである。
昨夜の読書がたたったのに違いない、と私は考えた。昨夜、私は十二時が過ぎるまで読み続けたので
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