お前さんの居る所が知れないと云って、お父《とっ》さんや皆《みんな》が何様《どんな》に心配をしていたか知れないよ」
と茶を長二の前に置いて、
政「温《ぬる》いからおあがり、お夜食は未だゞろうね、大澤《おおさわ》さんから戴いた鰤《ぶり》が味噌漬にしてあるから、それで一膳おたべよ」
長「えゝ有がとうがすが、今喰ったばかしですから」
と湯呑の茶を戴いて、一口グッと飲みまして、
長「親方……私《わっち》は遠方へ行く積りです」
清「其様《そん》なことをいうが、何所《どけ》へ行くのだ」
長「京都へ行って利齋の弟子になる積りで、家《うち》をしまったのです」
清「それも宜《い》いが、己も先《せん》の利齋の弟子で、毎《いつ》も話す通り三年釘を削らせられた辛抱を仕通したお蔭で、是までになったのだから、今の利齋ぐれえにゃア指《さ》す積りだが……むゝあの鹿島《かしま》さんの御注文で、島桐《しまぎり》の火鉢と桑の棚を拵《こせ》えたがの、棚の工合《ぐえい》は自分でも好《よ》く出来たようだから見てくれ」
と目で恒太郎に指図を致します。恒太郎は心得て、小僧の留吉と二人で仕事場から桑の書棚を持出して、長
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