手口の外で
 「若《わけ》え親方も兼公も行くにゃア及ばねえ」
 と声をかけ、無遠慮《ぶえんりょ》に腰障子を足でガラリッと押開け、どっこいと蹌《よろめ》いて入りましたのは長二でございます。結城木綿の二枚|布衣《ぬのこ》に西川縞の羽織を着て、盲縞の腹掛股引に白足袋という拵えで新しい麻裏草履を突《つッ》かけ、何所《どこ》で奢って来たか笹折《さゝおり》を提《さ》げ、微酔《ほろえい》機嫌で楊枝を使いながらズッと上って来ました様子が、平常《ふだん》と違いますから一同は恟りして、
 兼「兄い、何うしたんだ、何処へ行ってたんだ、己《おら》ア心配《しんぺい》したぜ」
 長「何処へ行こうと己《おれ》が勝手だ、心配《しんぺい》するやつが間抜だ、ゲエープウー」
 兼「やア珍らしい、兄い酔ってるな」
 長「酔おうが酔うめえが手前《てめえ》の厄介になりアしねえ、大きにお世話だ黙っていろ」
 と清兵衞の前に胡座《あぐら》をかいて坐りました。
 兼「何だか変だが、兄いが何うかしたぜ、コウ兄い……人にさん/″\心配《しんぺい》をさせておいて悪体《あくてい》を吐《つ》くとア酷《ひど》いじゃアねえか」
 長「生意気なことを
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