緒に駈落をしたんだ、彼《あ》の婆さん、なか/\色気があったからなア」
 恒「馬鹿アいうもんじゃアねえ……何《なん》か訳のあることだろうがナア兼……婆さんの宿へ行って様子を聞いて見たか」
 兼「聞きやアしねえが、隣の内儀《おかみ》さんの話に、今朝婆さんが来て、親方が旅に出ると云って暇をくれたから、田舎へ帰《けえ》らなけりゃアならねえと云ったそうだ」
 恒「其様《そん》な事なら第一番《でえいちばん》に此方《こっち》へいう筈だ」
 兼「己も左様《そう》だと思ったから聞きに来たんだ、親方にも断らずに旅に出る筈アねえ」
 留「女房の置去という事アあるが、此奴《こいつ》ア妙だ、兼|手前《てめえ》は長兄に嫌われて置去に遭《あ》ったんだ、おかしいなア」
 兼「冗談じゃアねえ、若《わけ》え親方の前《めえ》だが長兄に限っちゃア道楽で借金があるという訳じゃアなし、此の節ア好《い》い出入場が出来て、仕事が忙がしいので都合も好い訳だのに、夜遁《よにげ》のような事をするとア合点《がってん》がいかねえ……兎も角も親方に会って行こう」
 と奥へ通りました。奥には今年六十七の親方清兵衞が、茶微塵《ちゃみじん》松坂縞《ま
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