兵衛方では急ぎの仕事があって、養子の恒太郎が久次《きゅうじ》留吉《とめきち》などという三四名の職人を相手に、夜延《よなべ》仕事をしておる処へ、慌《あわ》てゝ兼松が駈込んでまいりまして、
兼「親方は宅《うち》かえ」
恒「何だ、恟《びっく》りした……兼か久しく来なかッたのう」
兼「長|兄《あにい》は来《き》やしねえか」
恒「いゝや」
兼「はてな」
恒「何うしたんだ、何《なん》か用か」
兼「聞いておくんなせえ、私《わっち》がね、六間堀の伯母が塩梅《あんべえ》がわりいので、昨日《きのう》見舞に行って泊って、先刻《さっき》帰《けえ》って見ると家《うち》が貸店《かしだな》になってるのサ、訳が分らねえから大屋さんへ行って聞いてみると、兄《あにい》が今朝早く来て、急に遠方へ行《ゆ》くことが出来たからッて、店賃を払って、家《うち》の道具や夜具蒲団は皆《みん》な兼松に遣ってくれろと云置いて、何処《どっ》かへ行ってしまったのサ、全体《ぜんてえ》何うしたんだろう」
二十
恒「そいつは大変《てえへん》だ、あの婆さんは何うした」
兼「婆さんも居ねえ」
久「それじゃア長兄と一
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