がお柳を組伏せて殺すのであろうと思いましたから、這寄って長二の足を引張る、長二は起上りながら幸兵衞を蹴飛《けりと》ばす、後《うしろ》からお柳が組付くを刄物で払う刀尖が小鬢《こびん》を掠《かす》ったので、お柳は驚き悲しい声を振搾《ふりしぼ》って、
 柳「人殺しイ」
 と遁出《にげだ》すのを、もう是までと覚悟を決めて引戻す長二の手元へ、お柳は咬付《かみつ》き、刄物を奪《と》ろうと揉合《もみあ》う中へ、踉《よろめ》きながら幸兵衞が割って入るを、お柳が気遣い、身を楯にかばいながら白刄《しらは》の光をあちらこちらと避《よ》けましたが、とうとうお柳は乳の下を深く突かれて、アッという声に、手負《ておい》ながら幸兵衛は、
 幸「おのれ現在の母を殺したか」
 と一生懸命に組付いて長二の鬢の毛を引掴《ひッつか》みましたが、何を申すも急所の深手、諸行無常と告渡《つげわた》る浅草寺の鐘の音《ね》を冥府《あのよ》へ苞《つと》に敢《あえ》なくも、其の儘息は絶えにけりと、芝居なれば義太夫《ちょぼ》にとって語るところです。さて幸兵衞夫婦は遂に命を落しました。其の翌日、丁度十一月十日の事でございます。回向院前の指物師清
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