働かせないように致しました。

        十九

 長「その刄物は何だ、廿九年|前《めえ》に殺そうと思って打棄《うっちゃ》った己が生きて居ちゃア都合が悪いから、また殺そうとするのか、本当の親の為になる事なら命は惜まねえが、実子と知りながら名告もしねえ手前《てめえ》のような無慈悲な親は親じゃアねえから、命はやられねえ……危ねえ」
 と刄物を※[#「てへん+「宛」で「夕」の右側が「ヒ」」、61−10]取《もぎと》ろうとするを、渡すまいと揉合う危なさを見かねて、お柳は二人に怪我をさせまいと背後《うしろ》へ廻って、長二の領元《えりもと》を掴み引分けんとするを、長二はお柳も己を殺す気か、よくも揃った非道な奴らだと、かッと逆上《のぼ》せて気も顛倒《てんどう》、一生懸命になって幸兵衛が逆手《さかて》に持った刄物の柄《つか》に手をかけて、引奪《ひったく》ろうとするを、幸兵衞が手前へ引く機《はずみ》に刀尖《きっさき》深く我と吾手《わがて》で胸先を刺貫《さしつらぬ》き、アッと叫んで仰向けに倒れる途端に、刄物は長二の手に残り、お柳に領を引かるゝまゝ将棋倒しにお柳と共に転んだのを、肩息ながら幸兵衛は長二
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