要《い》らねえ、返《けえ》すから受取っておけ」
 と腹掛のかくしから五十両の金包を取出し、幸兵衛に投付けると額に中《あた》りましたから堪りません、金の角で額が打切《ぶちき》れ、血が流れる痛さに、幸兵衞は益々|怒《おこ》って、突然《いきなり》長二を衝倒《つきたお》して、土足で頭を蹴ましたから、砂埃が眼に入って長二は物を見る事が出来ませんが、余りの口惜《くやし》さに手探りで幸兵衞の足を引捉《ひっとら》えて起上り、
 長「汝《うぬ》ウ蹴やアがッたな、此の義理知らずめ、最《も》う合点《がってん》がならねえ」
 と盲擲《めくらなぐ》りで拳固を振廻すを、幸兵衞は右に避《よ》け左に躱《かわ》し、空《くう》を打たして其の手を捉え捻上《ねじあげ》るを、そうはさせぬと長二は左を働かせて幸兵衛の領頸《えりくび》を掴み、引倒そうとする糞力に幸兵衛は敵《かな》いませんから、挿《さ》して居ります紙入留《かみいれどめ》の短刀を引抜いて切払おうとする白刄《しらは》が長二の眼先へ閃《ひらめ》いたから、長二もぎょッとしましたが、敵手《あいて》が刄物を持って居るのを見ては油断が出来ませんから、幸兵衞にひしと組付いて、両手を
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