おゝ寒い、斯様《こん》な所で云合ったッて仕方がない、速く帰って緩《ゆっ》くり相談をしよう、さア行こう」
 と、お柳の手を取って歩き出そうと致しまする路傍《みちばた》の枯蘆《かれあし》をガサ/\ッと掻分けて、幸兵衞夫婦の前へ一人の男が突立《つッた》ちました。是は申さないでも長二ということ、お察しでございましょう。

        十八

 請地の土手伝いに柳島へ帰ろうという途中、往来《ゆきゝ》も途絶えて物淋しい所へ、大の男がいきなりヌッとあらわれましたので、幸兵衞はぎょっとして遁《に》げようと思いましたが、女を連れて居りますから、度胸を据えてお柳を擁《かば》いながら、二足《ふたあし》三足《みあし》後退《あとじさり》して、
 幸「誰だ、何をするんだ」
 長「誰でもございません長二です」
 幸「ムヽ長二だ……長二、手前|何《なん》しに来たんだ」
 長「何しに来たとはお情《なさけ》ねえ……私《わっち》は九月の廿八日、背中の傷を見せた時、棄てられたお母《っか》さんだと察したが、奉公人の前《めえ》があるから黙って帰《けえ》って、三月越《みつきご》しお前《めえ》さん方の身上《みじょう》を聞糺《きゝ
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