た》りだのと云って明かしてくれねえのは何処までも己を棄てる了簡か、それとも己の思違いで本当の親じゃア無《ね》いのか知らん、いゝや左様《そう》で無《ね》え、本当の親で無くって彼様《あん》なことをいう筈は無《ね》い、それに五十両という金を……おゝ左様だ、彼《あ》の金は何うしたか」
と内に這入って見ると、行灯《あんどう》の側に最前の金包がありますから、
長「やア置いて行った…此の金を貰っちゃア済まねえ、チョッ忌々《いま/\》しい奴だ」
と独言《ひとりごと》を云いながら金包を手拭に包《くる》んで腹掛のどんぶりに押込み、腕組をして、女と一緒だからまだ其様《そんな》に遠くは行くまい、田圃径《たんぼみち》から請地《うけち》の堤伝《どてづた》いに先へ出越せば逢えるだろう、柳島まで行くには及ばねえと点頭《うなず》きながら、尻をはしょって麻裏草履を突《つっ》かけ、幸兵衞夫婦の跡を追って押上《おしあげ》の方《かた》へ駈出しました。此方《こちら》は幸兵衞夫婦丁度霜月九日の晩で、宵から陰《くも》る雪催しに、正北風《またらい》の強い請地の堤《どて》を、男は山岡頭巾をかぶり、女はお高祖頭巾《こそずきん》に顔を
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