さりゃアそれで宜《い》いんです、それを縁に金を貰おうの、お前《めえ》さんの家《うち》に厄介《やっけい》になろうのとは申しません、私は是まで通り指物屋でお出入を致しますから、只親だと一言《ひとこと》云っておくんなせえ」
と袂に縋《すが》るを振払い、
幸「何をするんだ、放さねえと家主《いえぬし》へ届けるが宜いか」
と云われて長二が少し怯《ひる》むを、得たりと、お柳を表へ連れ出そうとするを、長二が引留めようと前へ進む胸の辺《あたり》を右の手で力にまかせ突倒して、
幸「さア疾《はや》く」
とお柳の手を引き、見返りもせず柳島の方《かた》へ急いでまいります。後影《うしろかげ》を起上りながら、長二が恨めしそうに見送って居りましたが、思わず跣足《はだし》で表へ駈出し、十間ばかり追掛《おっか》けて立止り、向うを見詰めて、何か考えながら後歩《あとじさり》して元の上《あが》り口《はな》に戻り、ドッサリ腰をかけて溜息を吐《つ》き、
長「ハアー廿九年|前《めえ》に己を藪ん中《なけ》え棄てた無慈悲な親だが、会って見ると懐かしいから、名告ってもれえてえと思ったに、まだ邪慳を通して、人の事を気違だの騙《か
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