つきましたが、今さら取返しがつきませんから。
 長「へい左様《さよう》……私《わたくし》の親は……へい本当の親ではごぜいません、私を助けて、いゝえ私を養ってくれた親でございます」
 幸「はて、それでは親方は養子に貰われて来たので、本当の親御達はまだ達者かね」
 長「其様《そん》な訳じゃアございませんから」
 幸「そんなら里っ子ながれとでもいうのかね」
 長「いゝえ、左様《そう》でもございません」
 幸「どうしたのか訳が分らない」
 長「へい、此の事は是まで他《ひと》に云った事アございませんから、どうもヘイ私《わたくし》の恥ですから誠に」
 柳「親方何だね、お前さんの心掛が宜《い》いというので、旦那が此様《こんな》に可愛がって、お前さんの為になるように心配してくださるのだから、話したって宜いじゃアないかね」
 幸「どんな事か知らないが、次第によっちゃア及ばずながら力にもなろうから、話して聞かしなさい、決して他言はしないから」
 長「へい、そう御親切に仰しゃってくださるならお話をいたしましょうが、何卒《どうぞ》内々《ない/\》に願います………実ア私《わたくし》ア棄児です」
 柳「お前さんが
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