ア気が済まねえから、持って云って投《ほう》り込んで来たが、柳島の宅《うち》ア素的《すてき》に立派なもんだ、屋敷稼業というものア、泥坊のような商売《しょうべえ》と見える、そんな人のくれたものア喰っても旨くねえ、手前《てめえ》喰うなら皆《みん》な喰いねえ、己ア天麩羅でも買って喰うから」
と雇いの婆さんに天麩羅を買わせて茶漬を喰いますから、兼松も快よく其の料理を喰うことは出来ません。婆さんと二人で少しばかり喰って、残りを近所に住んでいる貧乏な病人に施すという塩梅で、万事並の職人とは心立《こゝろだて》が異《ちが》って居ります。
十五
長二は母の年回《ねんかい》の法事に、天竜院で龜甲屋幸兵衛に面会してから、格外の贔屓を受けていろ/\注文物があって、多分の手間料を貰いますから、活計向《くらしむき》も豊になりましたので、予《かね》ての心願どおり、思うまゝに貧窮人に施す事が出来るようになりましたのは、全く両親が草葉の蔭から助けてくれるのであろうと、益々両親の菩提[#「菩提」は底本では「菩堤」と誤記]《ぼだい》を弔うにつきましては、愈々《いよ/\》実《まこと》の両親の無慈悲を恨み
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