て届けに行ったら、先刻《さっき》取りにやったと云ったが、また此様《こん》な土産物をよこしたのか、気の毒な、何だ橋本の料理か、兼又|一杯《いっぺい》飲めるぜ」
 兼「ありがてえ、毎日《めえにち》斯ういう塩梅《あんべえ》に貰《もれ》え物があると世話が無《ね》えが、昨日のは喰いながらも心配だッた」
 長「何も其様《そん》な思いをして喰うにア及ばない、全体《ぜんてい》手前《てめえ》は意地がきたねえ、衣食住と云ってな着物と食物《くいもの》と家《うち》の三つア身分相応というものがあると、天竜院の方丈様が云った、職人ふぜいで毎日《めえにち》店屋《てんや》の料理なんぞを喰っちア罰《ばち》があたるア、貰った物にしろ毎日こんな物を喰っちア口が驕《おご》って来て、まずい物が喰えなくなるから、実ア有がた迷惑だ、職人でも芸人でも金持に贔屓にされるア宜《い》いが、見よう見真似で万事贅沢になって、気位《きぐらい》まで金持を気取って、他の者を見くびるようになるから、己《おら》ア金持と交際《つきあ》うことア大嫌《でえきれ》えだ、龜甲屋の旦那が来い/\というが、今まで一度も行かなかったが、忘れて行ったものを黙って置いちゃ
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