アあしからず/\御《ご》かんにんくだされたくそろでございます」
 兼「フム、お前《めえ》さんの方がなか/\旨《うめ》い物《もん》だ、其の先にむずかしい字が沢山《たんと》書いてあるが、お前さん読んでごらんなせい」
 手「こゝでございますか」
 兼「何でも其の見当だッた」
 手「こゝは……其の節置わすれ候《そろ》懐中物此のものへ御《おん》渡し被下度候《くだされたくそろ》、此の品粗まつなれどさし上候《あげそろ》先《まず》は用事のみあら/\※[#「かしく」の草書体文字、43−2]」
 兼「旨《うめ》い其の通りだ、その結尾《しまい》にある釣鉤《つりばり》のような字は何とか云ったね」
 手「かしくと読むのでございます」
 兼「ウムそうだ、分った事ア分ったが、兄いがいねえから、帰って其の訳を御新造に云っておくんなせい」
 と申しますので、手代も困って帰りました。其の後《あと》へ長二が戻って来ましたから、兼松が心配しながら手紙を見せると、
 長「昨日《きのう》御新造が薬を出したまんま紙入を忘れて行ったのを、今朝|見《め》っけたから取りに来ないうちにと思って、親方の所へ行った帰《けえ》りがけに柳島へ廻っ
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