《え》でも彫物《ほりもの》でも芸人でも同じ事で、銭を取りたいという野卑な根性や、他《ひと》に褒められたいという※[#「「滔」の「さんずい」に代えて「言」」、第4水準2−88−72]諛《おべっか》があっては美《い》い事は出来ないから、其様《そん》な了簡を打棄《うッちゃ》って、魂を籠めて不器用に拵えて見ろ、屹度《きっと》美い物が出来上るから、不器用にやんなさいと毎度申しますので、遂に不器用長二と綽名《あだな》をされる様になったのだと申すことで。

        二

 不器用長二の話を、其の頃浅草蔵前に住居いたしました坂倉屋助七《さかくらやすけしち》と申す大家《たいけ》の主人が聞きまして、面白い職人もあるものだ、予《かね》て御先祖のお位牌を入れる仏壇にしようと思って購《もと》めて置いた、三宅島の桑板があるから、長二に指《さ》させようと、店の三吉《さんきち》という丁稚《でっち》に言付けて、長二を呼びにやりました。其の頃蔵前の坂倉屋と申しては贅沢を極《きわ》めて、金銭を湯水のように使いますから、諸芸人はなおさら、諸職人とも何卒《どうか》贔屓を受けたいと願う程でございますゆえ、大抵の職人なら最
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