んが、生憎|兄《あにき》えゝ長二が留守ですから、手紙も皆《みん》な置いてっておくんなせえ」
 手「いゝえ、是非手紙をお目にかけろと申付けられましたから、お前さん開けて見ておくんなさい」
 兼「だって私《わっち》にはむずかしい手紙は読めねえからね」
 手「御新造様のは毎《いつ》でも仮名ばかりですが」
 兼「そうかね」
 と怖々手紙を開《ひら》いて、
 兼「えゝと何《なん》だナ……鳥渡申上々《とりなべちゅうじょう/″\》……はてな鳥なべになりそうな種はなかったが、えゝと……昨日《さくひ》はよき折……さア困った、もしお使い、実はね鉋屑《かんなくず》の中にあったからお土産だと思ってね、お手紙の通り好《い》い折でしたが、つい喰ったので」
 手「へえー左様《さよう》でございますか、私《わたくし》は火鉢の側のように承わりましたが」
 兼「何処でも同じ事だが、それから何だ、えゝ……よき折から……空になった事を知ってるのか知らん、御《おん》めもし致《いたし》…何という字だろう…御うれしく……はてな、御めしがうれしいとは何ういう訳だろう、それから…そんじ上《じょう》…※[#「まいらせそろ」の草書体文字、4
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