配《しんぺい》しなさんな、そんな吝《けち》な旦那じゃア無《ね》え、もしか取りに来たら己が喰っちまったというから兄いも喰いねえ、一合買って来るから」
と、兼松は是より酒を買って来て、折詰の料理を下物《さかな》に満腹して寝てしまいました。其の翌朝《よくあさ》長二は何か相談事があって大徳院前の清兵衛親方のところへ参りました後《あと》で兼松が台所を片付けながら、空の折を見て、長二の云う通り忘れて行ったので、柳島から取りに来はしまいかと少し気になるところへ、毎度使いに来る龜甲屋の手代が表口から、
手代「はい御免なさい、柳島からまいりました」
と聞いて兼松はぎょっとしました。
十四
兼松は遁《に》げる訳にも参りませんから、まご/\しながら、
兼「えい何か御用で」
手「はい、御新造《ごしんぞ》様が此のお手紙をお見せ申して、昨日《きのう》忘れた物を取って来てくれろと仰しゃいました」
兼「へえー忘れた物を、へえー」
手「それに此の品を上げて来いと仰しゃいました」
と手紙と包物《つゝみもの》を出しましたが、兼松は蒼くなって、遠くの方から、
兼「何《なん》だか分りやせ
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