で気が利いてるから、桑の白質《しらた》まじりというのだ」
長「巧《うま》く見立てたなア」
兼「兄いも己が見立てた」
長「何《なん》と」
兼「兄いは杉の粗理《あらまさ》だなア」
長「何故」
兼「何故って厭味なしでさっぱりしていて、長く付合うほど好《よ》くなるからさ」
長「そんなら兼、手前《てめえ》は檜の生節《いきぶし》かな」
兼「有難《ありがて》え、幅があって匂いが好《い》いというのか」
長「いゝや、時々ポンと抜けることがあるというのよ」
兼「人を馬鹿にするなア、毎《いつ》でもしめえにア其様《そん》な事だ、おやア折《おり》を置いて行ったぜ、平清のお土産とは気が利いてる、一杯《いっぺい》飲めるぜ」
長「馬鹿アいうなよ、忘れて行ったのなら届けなけりゃアわりいよ」
兼「なに忘れてッたのじゃア無《ね》え、コウ見ねえ、魚肉《なまぐさ》の入《へえ》ってる折にわざ/\熨斗《のし》が挿《はさ》んであるから、進上というのに違いねえ、独身もので不自由というところを察して持って来たんだ、行届いた旦那だ………何が入《へえ》ってるか」
長「コウよしねえ、取りに来ると困るからよ」
兼「心
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