すか」
と幸兵衞が推《お》して尋ねますから、和尚は長二の身の上を委しく話したならば、不憫が増して一層贔屓にしてくれるであろうとの親切から、先刻長二に聞きました一伍一什《いちぶしじゅう》のことを話しますと、幸兵衛は大きに驚いた様子で、左様に不仕合な男なれば一層目をかけてやろうと申して立帰りました後《のち》は、度々《たび/\》長二の宅を尋ねて種々の品を注文いたし、多分の手間料を払いますので、長二は他の仕事を断って、兼松を相手に龜甲屋の仕事ばかりをしても手廻らぬほど忙《せわ》しい事でございました。其の年の四月から五月まで深川に成田の不動尊のお開帳があって、大層賑いました。其のお開帳へ参詣した帰りがけで、四月の廿八日の夕方龜甲屋幸兵衞は女房のお柳《りゅう》を連れ、供の男に折詰の料理を提《さ》げさせて、長二の宅へ立寄りました。
幸「親方|宅《うち》かえ」
兼「こりゃアいらっしゃい……兄い……鳥越の旦那が」
長「そうか、イヤこれは、まアお上《あが》んなさい、相変らず散かっています」
幸「今日はお開帳へまいって、人込で逆上《のぼ》せたから平清《ひらせい》で支度をして、帰りがけだが、今夜は柳
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