ったものでございます」
 長「へい、あれは、ヘイ私《わっち》が拵《こせ》えたので、仕事の隙《すき》に剰木《あまりっき》で拵えたのですから思うように出来ていません」
 幸「へえーそれでは貴方は指物をなさるので」
 和「はて、これが指物師で名高い不器用イヽヤナニ長二さんという人さ」
 幸「フム、それでは予《かね》て風聞に聞いた名人の木具屋《きぐや》さん……へえー貴方が其の親方でございますか、慥《たし》か本所の〆切とかにお住いですな」
 長「左様です」
 幸「それでは柳島の私《わし》の別荘からは近い…就てはお目にかゝったのを幸い、差向《さしむ》き客火鉢を二十に煙草盆を五六対拵えてもらいたいのですが、尤《もっと》も桐でも桑でもかまいません、何時頃までに出来ますね」
 長「早くは出来ません、良く拵《こせ》えるのには木の十年も乾《から》した筋の良《い》いのを捜さなけれアいけませんから」
 幸「どうか願います、お近いから近日柳島の宅へ一度来てください、漸々《よう/\》此間《こないだ》普請《ふしん》が出来上ったばかりだから、種々誂えたいものがあります」
 長「へい、私《わっち》はどうも独身《ひとりもの
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