して片隅の方に扣《ひか》えて居《お》ると、其の男は和尚に雑《ざっ》と挨拶して布施を納め、一二服煙草を呑んで本堂へお詣《まい》りに行きました。其の容体《ようだい》が頗《すこぶ》る大柄《おおへい》ですから、長二は此様《こん》な人に話でもしかけられては面倒だ、此の間に帰ろうと思いまして暇乞《いとまごい》を致しますと、和尚は又其の人に長二を紹介《ひきあわ》して出入場《でいりば》にしてやろうとの親切心がありますから、
 和「まア少しお待ちなさい、今のお方は浅草|鳥越《とりこえ》の龜甲屋《きっこうや》幸兵衛《こうべえ》様というて私《わし》の一檀家じゃ、なか/\の御身代で、苦労人の上に万事贅沢にして居られるから、お近附になって置くが好《え》い」
 長「へい有難うございますが、少し急ぎの仕事が」
 和「今日は最《も》う仕事は出来はすまい、ムヽ仕事と云えば私《わし》も一つ煙草盆を拵《こさ》えてもらいたいが、何ういうのが宜《え》いかな……これは前住《せんじゅう》が持って居ったのじゃが、暴《あろ》うしたと見えて此様《こない》に毀《こわ》れて役にたゝんが、落板《おとし》はまだ使える、此の落板に合わして好《え》
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