年の暮頃から俄かに仏|三昧《ざんまい》を初め、殊に今日の法事は職人の身分には過ぎて居《お》るほど立派に営みしなど、近頃|合点《がてん》のいかぬ事種々あるが是には何か仔細のある事ならん、次第によっては別に供養の仕方もあれば、苦しからずば仔細を話されよと懇《ねんごろ》に申されますゆえ、長二も予《かね》て機《おり》もあらば和尚にだけは身の上の一伍一什《いちぶしじゅう》を打明けようと思って居りました所でございますから、幸いのことと、自分は斯々《かく/\》の棄児《すてご》にて、長左衛門夫婦に救われて養育を受けし本末《もとすえ》を委《くわ》しく話して居りますところへ、小坊主が案内して通しました男は、年の頃五十一二で、色の白い鼻準《はなすじ》の高い、眼の力んだ丸顔で、中肉中背、衣服は糸織藍万《いとおりあいまん》の袷《あわせ》に、琉球紬《りゅうきゅうつむぎ》の下着を袷重ねにして、茶献上の帯で、小紋の絽《ろ》の一重羽織を着て、珊瑚《さんご》の六分珠《ろくぶだま》の緒締《おじめ》に、金無垢の前金物《まえがなもの》を打った金革の煙草入は長門の筒差《つゝざし》という、賤《いや》しからぬ拵えですから、長二は遠慮
前へ
次へ
全165ページ中48ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング