分の布施を納め、先祖の過去帳を調べて両親の戒名を書入れて貰い、それより和尚の案内で湯河原村の向山にある先祖の墓に参詣いたしたので、婆さんは喋りませんが、寺の和尚から、藤屋の客は棄児の二助だということが近所へ知れかゝって来ましたから、疵の痛みが癒ったを幸い、十一月の初旬《はじめ》に江戸へ立帰りました。さて長二はお母が貧乏の中で洒《すゝ》ぎ洗濯や針仕事をして養育するのを見かね、少しにても早くお母の手助けになろうと、十歳の時自分からお母に頼んで清兵衛親方の弟子になったのですから、親方から貰う小遣銭《こづかいぜに》はいうまでもなく、駄菓子でも焼薯《やきいも》でもしまって置いて、仕事場の隙《すき》を見て必ずお母のところへ持ってまいりましたから、清兵衞親方も感心して、他の職人より目をかけて可愛がりました。斯様《かよう》に孝心の深い長二でございますから、親の恩の有難いことは知って居りますが、今度湯治場で始めて長左衛門夫婦は養い親であるということを知ったばかりでなく、実《まこと》の親達の無慈悲を聞きましたから、殊更《ことさら》に養い親の恩が有難くなりましたが、両親とも歿《な》い後《のち》は致し方がござ
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