十

 長「婆さん、お願いだからお前《めえ》も己のことを此家《こっち》の人達へ内《ねえ》しょにしていてくんなせえ……これは己の少《ちい》さい時守をしてくんなすったお礼だ」
 とまた幾許《いくら》か金を包んで遣りますと、婆さんは大喜びで、
 婆「此様《こんな》に貰っちゃア気の毒だが、お前《めえ》さんも出世イして、斯《こ》んな身分になって私《わし》も嬉しいからお辞儀イせずに戴きやす……私イ益《えき》もねいこんだ、お前さんのことを何で他《ひと》に話すもんかね、気遣《きづけ》えしねいが宜《え》い」
 長「何分頼むよ、お前《めえ》のお蔭で委《くわ》しい事が知れて有難《ありがて》え……ムヽそうだ、婆さん、お前その、長左衛門の先祖の墓のある寺を知ってるか」
 婆「知ってますよ、泉村《いずみむら》の福泉寺《ふくせんじ》様だア」
 長「泉村とア何方《どっち》だ、遠いか」
 婆「なアにハア十二丁べい下《しも》だ、明日《あす》私《わし》が案内しますべいか」
 長「それには及ばねえよ」
 婆「左様《そう》かね、そんなら私《わし》イ下へめえりやすよ、用があったら何時でも呼ばらッしゃい」
 と婆
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