し婀娜《あだ》な筋だな、何者だろう」
長「何者だって其様《そん》な奴に用はねえ、婆さん此の疵は癒っても乳の無《ね》いので困ったろうねえ」
婆「そうだ、長左衞門|殿《どん》とおさなさんが可愛《かわえ》がって貰い乳《ぢ》イして漸々《よう/\》に育って、其の時名主様をしていた伊藤様へ願って、自分の子にしたがね、名前《なめえ》が知んねいと云ったら、名主様が、お前《めえ》達二人の丹誠で命を助けたのだから二助としろと云わしゃった、何がさて名主様が命名親《なつけおや》だんべい、サア村の者が可愛《かわえ》がるめいことか、外へでも抱いて出ると、手から手渡しで、村境《むらざかい》まで行ってしまう始末さ、私《わし》らも宜《よ》く抱いて守《もり》をしたんだが、今じゃア大《でか》くなってハア抱く事ア出来ねい」
兼「冗談じゃアねえ、今抱かれてたまるものかナ……そうだが兄い……不思議な婆さんに逢ったので、思いがけねえ事を聞いたなア」
長「ウム、初めて自分の身の上を知った、道理で此の疵のことをいうとお母が涙ぐんだのだ……兼《かね》……己の外聞《げいぶん》になるから此の事ア決して他《ひと》に云ってくれるなよ」
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