左衛門殿が抱いて帰《けえ》って訳え話したから、おさなさんも魂消て、吉浜の医者どんを呼びにやるやらハア村中の騒ぎになったから、私《わし》が行って見ると、藤屋の客人の子だから、直《すぐ》に帰《けえ》って何処の人だか手掛《てがゝり》イ見付けようと思って客人が預けて行った荷物を開けて見ると、梅醤《うめびしお》の曲物《まげもの》と、油紙《あぶらッかみ》に包んだ孩児の襁褓《しめし》ばかりサ、そんで二人とも棄児《すてご》をしに来たんだと分ったので、直に吉浜から江の浦小田原と手分《てわけ》えして尋ねたが知んねいでしまった、何でも山越しに箱根の方へ遁《ぬ》げたこんだろうと後《あと》で評議イしたことサ、孩児は背中の疵が大《でけ》えに血がえらく出たゞから、所詮助かるめいと医者どんが見放したのを、長左衛門殿夫婦が夜も寝ねいで丹誠して、湯へ入れては疵口を湯でなでゝ看護をしたところが、効験《きゝめ》は恐ろしいもんで、六週《むまわり》も経っただねえ、大《でけ》え穴にはなったが疵口が癒ってしまって、達者になったのだ、寿命のある人は別なもんか、助かるめいと思ったお前《めい》さんが此様《こん》なに大《でか》くなったのにゃ
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