ときり》休むんだ、喉《のど》が乾いてなんねいから」
 兼「婆さん、なか/\旨《うめ》えもんだ、サアこゝへ茶を注《つ》いで置いたぜ」
 婆「ハアこれは御馳走さま……一息ついて直《すぐ》に後《あと》を話しますべい」

        九

 兼「婆さん、それから何うしたんだ、早く話してくんなせえ」
 婆「ハア、それからだ、其の翌日《あくるひ》の七時《なゝつさがり》であったがね、吉浜にいる知合《しりえい》を尋ねて復《また》帰《けえ》って来るから、荷物は預けて置くが、初めて来たのだからと云って、勘定をして二人が出て行ったサ、其の日長左衛門|殿《どん》が山へ箱根竹《はこねだけ》イ芟《き》りに行って、日暮《ひくれ》に下りて来ると、山の下で孩児の啼声《なきごえ》がするから、魂消て行って見ると、沢の岸の、茅《かや》だの竹の生《へ》えている中に孩児が火の付いたように啼いてるから、何うしたんかと抱上げて見ると、どうだんべい、可愛そうに竹の切株《きッかぶ》が孩児の肩のところへ突刺《つッさゝ》っていたんだ、これじゃア大人でも泣かずにゃア居られねい、打捨《うちゃっ》て置こうもんならおッ死《ち》んでしまうから、長
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