あ》いていて、暑さ寒さに痛んで困るのよ」
婆「へいー左様《そう》かねえ、孩児《ねゝっこ》の時そんな疵うでかしちゃアおっ死《ち》んでしまうだねえ、どうして癒ったかねえ」
長「どうして癒ったどころか、自分に見えねえから此様《こん》な疵のあるのも知らなかったのさ、九歳《こゝのつ》の夏のことだっけ、河へ泳ぎに行くと、友達が手前《てめえ》の背中にア穴が開いてると云って馬鹿にしやがったので、初めて疵のあるのを知ったのよ、それから宅《うち》へ帰《けえ》ってお母《ふくろ》に、何うして此様な穴があるのだ、友達が馬鹿にしていけねえから何うかしてくれろと無理をいうと、お母が涙ぐんでノ、その疵の事を云われると胸が痛くなるから云ってくれるな、他《ひと》に其の疵を見せめえと思って裸体《はだか》で外へ出したことのねえに、何故泳ぎに行ったのだと云って泣くから、己もそれっきりにしておいたから、到頭分らずじまいになってしまったのよ」
という話を聞きながら、婆さんは長二の顔をしげ/\と見詰めておりました。
八
婆「はてね……お前《めえ》さんの母様《かゝさま》というは江戸者かねえ」
長「何故だえ
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