したもんじゃアねえか、そういう怪我を度々《たび/\》する処にゃア、斯ういう温泉が湧くてえのは」
兼「それが天道《てんとう》人を殺さずというのだ、世界《せけえ》の事ア皆《み》んな其様《そん》な塩梅《あんべい》に都合よくなってるんだけれど、人間というお世話やきが出てごちゃまかして面倒くさくしてしまッたんだ」
長「旨い事を知ってるなア、感心だ」
兼「旨いと云やア、それ此処《こけ》え来る時、船から上って、ソレ休んだ処《とこ》ア何《なん》とか云ったっけ」
長「浜辺の好《い》い景色の処《ところ》か」
兼「左様《そう》よ」
長「ありゃア吉浜という処よ」
兼「それから飯を喰った家《うち》は何とか云ったッけ」
長「橋本屋よ」
兼「ムヽ橋本屋だ、彼家《あすこ》で喰った※[#「魚へん+君」、21−6]《めばる》の煮肴《にざかな》は素的《すてき》に旨かったなア」
長「魚が新らしいのに、船で臭《くせ》え飯を喰った挙句《あげく》だったからよ」
兼「そうかア知らねいが、今に忘れられねえ、全体《ぜんてい》此辺《こけいら》は浜方《はまかた》が近いにしちゃア魚が少ねえ、鯛に比目魚《ひらめ》か※[#「
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