出したり、炭を焼いたり、種々《しゅ/″\》の山稼ぎをいたして活計《くらし》を立っている様子です。此の所から小田原まで五里十九丁、熱海まで二里半|余《よ》で、何《いず》れへまいるのにも路《みち》は宜しくございませんが、温泉のあるお蔭で年中旅客が絶えず、中々繁昌をいたします。さて長二と兼松は温泉宿藤屋に逗留して、二週《ふたまわり》ほど湯治をいたしたので、忽《たちま》ち効験《きゝめ》が顕《あら》われて、両人とも疵所《きずしょ》の疼《いた》みが薄らぎましたから、少し退屈の気味で、
兼「長《ちょう》兄い……不思議だな、一昨日《おとゝい》あたりからズキ/\する疼みが失《なくな》ってしまった、能く利く湯だなア」
長「それだから此様《こん》な山ん中へ来る人があるんだ」
兼「本当に左様《そう》だ、怪我でもしなけりゃア来る処じゃアねえ、此処《こけ》え来て見ると怪我人もあるもんだなア」
長「ムヽ、伊豆|相模《さがみ》は石山が多いから、石切職人《いしきりじょくにん》が始終怪我をするそうだ、見ねえ来ている奴ア大抵石切だ、どんな怪我でも一週《ひとまわり》か二週で癒《なお》るということだが、好《い》い塩梅に
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