ざいません」
と仏壇を持出しそうにする心底の潔白なのに、助七は益々感服いたしまして、
助「まア待ってください……親方……私《わし》がお前の仕事を疑ぐって、折角丹誠の仏壇を瑕物にしたのは重々わるかった、其処んところは幾重にもお詫をしますから、何卒《どうぞ》仏壇は置いて行ってください」
長「だって此様《こんな》に瑕が付いてるものは上げられねえ」
助「それが却って貴いのだ、聖堂の林様はお出入だから殿様にお願い申して、私《わし》が才槌で瑕をつけた因由《いわれ》を記《か》いて戴いて、其の書面を此の仏壇に添えて子孫に譲ろうと思いますから、親方機嫌を直して下さい」
と只管《ひたすら》に頼みますから、長二も其の考えを面白く思い、打解けて仏壇を持帰るのを見合せましたから、助七は大喜びで、無類の仏壇が出来た慶《よろこ》びの印として手間料の外に金百両を添えて出しましたが、長二は何うしてもこれを受けませんで、手間料だけ貰って帰りました。助七は直《すぐ》に林大學頭《はやしだいがくのかみ》様の邸《やしき》へ参り、殿様に右の次第を申上げますと、殿様も長二の潔白なる心底と伎倆《ぎりょう》の非凡なるに感服され
前へ
次へ
全165ページ中25ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング