持ってまいった茶碗の水をグッと呑みほして太息《おおいき》を吐《つ》き、顔色を和《やわら》げまして、
助「親方……恐入りました……誠に感服……名人だ……名人の作の仏壇、千両でも廉《やす》い、約束通り千両出しましょう」
長「アハヽヽ精神《たましい》を籠めた処が分りましたか、私《わっちゃ》ア自慢をいう事ア大嫌《だいきら》いだが、それさえ分れば宜《よ》うがす、此様《こんな》に瑕が付いちゃア道具にはなりませんから、持って帰って其の内に見付かり次第、元の通りの板はお返し申します」
助「そりゃア困る、瑕があっても構わないから千両で引取ろうというのだ」
長「千両なんて価値《ねうち》はありません」
助「だって先刻《さっき》賭《かけ》をしたから」
長「そりゃア旦那が勝手に仰しゃったので、私《わたくし》が千両下さいと云ったのじアねえのです、私《わっち》ア賭事ア性来《うまれつき》嫌いです」
助「左様《そう》だろうが、これは別物だ」
長「何だか知りませんが、他《ひと》の仕事を疑ぐるというのが全体《ぜんてえ》気にくわないから持って帰るんです、銭金《ぜにかね》に目を眩《く》れて仕事をする職人じゃアご
前へ
次へ
全165ページ中24ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング