島「ではございましょうが、このお仏壇をお打ちなさるのは御先祖様をお打ちなさるようなものではございませんか」
助「ムヽ左様《そう》かな」
と助七は一時《いちじ》お島の言葉に立止りましたが、扨《さて》は長二の奴も、先祖の位牌を入れる仏壇ゆえ、遠慮して吾《われ》が打つまいと思って、斯様《かよう》な高言を吐《は》いたに違いない、憎さも憎し、見事叩っ毀して面の皮を引剥《ひんむ》いてくりょう。と額に太い青筋を出して、お島を押退《おしの》けながら、
助「まだお位牌を入れないから構う事アない……見ていろ、ばら/\にして見せるから」
と助七は才槌を揮《ふ》り上げ、力に任せて何処という嫌いなく続けざまに仏壇を打ちましたが、板に瑕《きず》が付くばかりで、止口《とめぐち》釘締《くぎじめ》は少しも弛《ゆる》みません。助七は大家《たいけ》の主人で重い物は傘の外《ほか》持った事のない上に、年をとって居りますから、もう力と息が続きませんので、呆れて才槌を投《ほう》り出して其処《そこ》へ尻餅をつき、せい/\いって、自分で右の手首を揉みながら、
助「お島……水を一杯……速く」
と云いますから、お島が急いで
前へ
次へ
全165ページ中23ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング