ち》を助七の前へ投出しました。助七は今の口上を聞き、成ほど普通の品より、手堅く出来てはいようが、元々釘で打付《うちつ》けたものだから叩いて毀れぬ事はない、高慢をいうにも程があると思いましたゆえ、
 助「そりゃア親方が丹誠をして拵《こさ》えたのだから少しぐらいの事では毀れもしまいが、此の才※[#「てへん+二点しんにょうの「追」」、第4水準2−13−38]《さいづち》で擲《なぐ》って毀れないとは些《ちっ》と高言《こうげん》が過《すぎ》るようだ」
 と嘲笑《あざわら》いましたから、正直|一途《いちず》の長二はむっと致しまして、
 長「旦那……高言か高言でねえか打擲《ぶんなぐ》ってごらんなせい、打擲って一本でも釘が弛《ゆる》んだ日にゃア手間は一文も戴きません」
 助「ムヽ面白い、此の才槌で力一ぱいに叩いて毀れなけりゃア千両で買ってやろう」
 と才槌を持って立上りますを、先刻から心配しながら双方の問答を聞いていましたお島が引留めまして、
 島「お父《とっ》さん……短気なことを遊ばしますな、折角見事に出来ましたお仏壇を」
 助「見事か知らないが、己には気にくわない仏壇だから打毀《ぶちこわ》すのだ」
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