たのです……私《わたくし》ア注文に違ってる品を瞞《ごま》かして納めるような不親切をする事ア大嫌《でえきれ》えです……最初手間料に糸目をつけないと仰しゃったから請負ったので、斯ういう代物《しろもの》は出来上ってみないと幾許《いくら》戴いて宜《い》いか分りません、此の仏壇に打ってある六十四本の釘には一本/\私の精神が打込んでありますから、随分|廉《やす》い手間料だと思います」
助「フム、その講釈の通りなら百両は廉いものだが、火事の時|竹長持《たけながもち》の棒でも突《つッ》かけられたら此の辺の合せ目がミシリといきそうだ」
長「その御心配は御道理《ごもっとも》ですが、外から何様《どん》な物が打付《ぶッつか》っても釘の離れるようなことア決してありませんが中から強《ひど》く打付けては事によると離れましょう、併《しか》し仏壇ですから中から打付かるものは花立が倒れるとか、香炉が転《ころが》るぐれえの事ですから、気遣《きづけ》えはございません、嘘だと思召すなら丁度今途中で買って来た才槌《せいづち》を持ってますから、これで打擲《ぶんなぐ》ってごらんなせい」
と腰に挿していた樫《かし》の才槌《さいづ
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