ちましたから、
助「おい親方、この仏壇の板は此方《こっち》から出したのだよ、百両とはお前間違いではないか」
長「へい、板を戴いた事ア知っています、何も間違いではございません」
助「是だけの手間が百両とは少し法外ではないか」
長「そう思召しましょうが、それだけ手間がかゝったのです、百両出せないと仰しゃるなら宜うがす元の通りの板をお返し申しますから仏壇は持って帰ります……素人衆には分りますまいよ」
と云いながら仏壇を持ちて帰ろうといたしますから、助七が押留《おしと》めまして、
助「親方、まア待ちなさい、素人に分らないというが、百両という価値《ねうち》の細工が何処にあるのだえ」
長「はい……旦那御注文の時何と仰しゃいました、この仏壇は大切の品だから、火事などで持出す時、他の物が打付《ぶッつか》っても、又|落《おっ》ことしても毀《こわ》れないようにしたいが、丈夫一式で見てくれが拙《まず》くっては困ると仰しゃったではございませんか、随分無理な注文ですが、出来ない事はありませんから、釘一本|他手《ひとで》にかけず一生懸命に精神《たましい》を入れて、漸々《よう/\》御注文通りに拵え上げ
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