せるため来月お出入|邸《やしき》の筒井様の奥へ御奉公にあげる積りですから、娘《これ》が下《さが》るまでゞ宜《い》いんです」
長「そんなら拵えましょう」
助「湯河原は打撲《うちみ》と金瘡《きりきず》には能《い》いというから、緩《ゆっく》り湯治をなさるが宜《い》い、就《つい》てはこの仏壇の作料を上げましょう、幾許《いくら》あげたらよいね」
長「左様……別段の御注文でしたから思召《おぼしめし》に適《かな》うように拵えましたので、思ったより手間がかゝりましたが……百両で宜《よ》うございます」
其の頃の百両と申す金は当節の千両にも向う大金で、如何に念入でも一個《ひとつ》の仏壇の細工料が百両とは余り法外でございますから、助七は恟《びっく》りして、何《なん》にも云わず、暫く長二の顔を見詰めて居りました。
五
助七は仏壇の細工は十分心に適って丈夫そうには出来たが、百両の手間がかゝったとは思えません、これは己が余り褒めすぎたのに附込んで、己の家《うち》が金持だから法外の事をいうのであろう、扨《さて》は此奴《こいつ》は潔白な気性だと思いの外《ほか》、卑しい了簡の奴だなと腹が立
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