う事は分らないのは道理《もっとも》だ、此の娘なぞは良《よ》い所へ嫁に遣ろうと思って、師匠を家《うち》へ呼んで、読書《よみかき》から諸芸を仕込んだのだから、兎も角も理非の弁別がつくようになったんだが、随分金がかゝるから大抵の家では女にまでは行届《ゆきとゞ》きません、それに女という奴は嫁入りという大物入がありますからなア、物入と云やア娘も其の内何処かへ嫁に遣らなければなりませんが、其の時の箪笥《たんす》三重《みかさね》と用箪笥を親方に願いたい、何卒《どうか》心懸けて木の良《い》いのを見付けてください」
 長「畏《かしこ》まりましたが、先達《せんだっ》て職人の兼という奴が、鑿《のみ》で足の拇指《おやゆび》を突切《つッき》った傷が破傷風《はしょうふう》にでもなりそうで、甚《ひど》く痛むと云いますから、相州の湯河原へ湯治にやろうと思いますが、病人を一人遣る訳にもいきませんから、私《わたくし》も幼《ちい》さい時怪我をした背中の旧傷《ふるきず》が暑さ寒さに悩みますので、一緒に行って序《つい》でに湯治をして来ようと思いますので、お急ぎではどうも」
 助「いゝや今が今というのではありません、行儀を覚えさ
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