う始末でございますから、お島は長二を美《い》い男とは思いませんが、予《かね》て父助七から長二の行いの他《ひと》に異《かわ》っていることを聞いて居ります上に、今また年に似合わぬ善《よ》い心掛なのを聞いて深く心に感じ、これにひきかえて兄の助藏が放蕩に金銭を使い捨てるに思い較べて、窃《ひそ》かに恥じましたから、ちょっと赤面致したので、また長二もお島を見て別に美しいとも思いませんが、是まで貧民に金銭を施すのを、職人の分際で余計な事だ、馬鹿々々しいから止せと留める者は幾許《いくら》もありましたが、褒める人は一人もありませんでしたに、今十七か十八のお嬢さんが褒めたのでありますから、長二は又お島が褒めた心に感心を致して、其の顔を見たのでございます。助七はそれらの事に毫《すこし》も心づかず、
 「親方の施し道楽は至極結構だが、女房を持たないと活計向《くらしむき》に損がありますから、早く良《い》いのをお貰いなさい」
 長「そりゃア知っていますが、女という奴ア吝《けち》なもんで、お嬢さんのように施しを褒めてくれる女はございませんから持たないんです」
 助「フム左様さ、女には教えがないから、仁だの義だのとい
前へ 次へ
全165ページ中17ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング