》らぬうちはお処刑には相成らぬぞ、其の方公儀の御用を相勤め居った龜甲屋の手代をいたしながら、其の儀相心得居らぬか、不束者《ふつゝかもの》めが」

        四十

 奉行は高声《こうせい》に叱りつけて、更に言葉を和《やわら》げられ、
 奉「半右衞門妻柳は、長二郎の実母ゆえ、親殺しと申す者もあろうが、親殺しに相成らぬは、斯ういう次第じゃ、柳は夫半右衞門|存生中《ぞんじょうちゅう》密夫《みっぷ》を引入れ、姦通致せし廉《かど》ばかりでも既に半右衞門の妻たる道を失って居《お》る半右衞門に於《おい》て此の事を知ったならば軽うても離縁いたすであろう、殊に奸夫幸兵衞と申合わせ窃《ひそ》かに半右衞門を殺した大悪非道な女じゃによって、最早半右衛門の妻でない、半右衛門の妻でなければ長二郎のために母でない、この道理を礼記と申す書物によって林大學頭より上様へ言上いたしたによって、長二郎は全く実父の敵である、他人の柳と幸兵衛を討取ったのであると御裁許に相成ったのじゃ、萬助分ったか」
 萬「恐入りました」
 奉「茂二作並に妻由、其の方共半右衞門方へ奉公中、主人妻柳に幸兵衞を取持ったるのみならず、柳の悪事に同
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