門の実子なること明白に相分りし上は、其の方が先月九日の夜《よ》、柳島押上堤において幸兵衞、柳の両人を殺害いたしたのは、十ヶ年前右両人のため、非業に相果てたる実父半右衞門の敵《かたき》を討ったのであるぞ、孝心の段上にも奇特に思召し、青差《あおざし》拾貫文《じっかんもん》御褒美下し置かるゝ有難く心得ませい、且《かつ》半右衞門の跡目相続の上、手代萬助は其の方において永の暇《いとま》申付けて宜かろう」
萬「へい、恐れながら申上げます、何ういう贔屓か存じませんが余《あんま》り依估《えこ》の御沙汰《ごさた》かと存じます、成程幸兵衞は親の敵《かたき》でもござりましょうが、御新造は長二郎の母に相違ござりませんから、親殺しのお処刑《しおき》に相成るものと心得ますに、御褒美を下さりますとは、一円合点のまいりませぬ御裁判かと存じます」
奉「フム、よう不審に心付いたが、依估の沙汰とは不埓な申分じゃ、其の方斯様な裁判が奉行一存の計《はから》いに相成ると存じ居《お》るか、一人《いちにん》の者お処刑に相成る時は、老中方の御評議に相成り上様へ伺い上様の思召をもって御裁許の上、老中方の御印文《ごいんもん》が据《すわ
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