て居《お》るうち、根岸の龜甲屋へも立入ることになり、諂諛《おべっか》が旨いのでお柳の気に入り、茂二作夫婦とも懇意になりました所から、主人半右衞門が病気の節お柳幸兵衞の内意を受けた茂二作夫婦から、他《ひと》に知れないように半右衞門を毒殺してくれたら、百両礼をすると頼まれたが、番木鼈《まちん》の外は毒薬を知りません。また鍼《はり》には戻天《るいてん》といって一打《ひとうち》で人を殺す術があるということは聞いて居りますが、それまでの修業をいたしませんから、殺す方角がつきませんが、眼の前に吊下《ぶらさが》っている百両の金を取損《とりそこな》うのも残念と、種々《いろ/\》に考えるうち、人体の左の乳の下は心谷命門《しんこくめいもん》といって大切な所ゆえ、秘伝を受けぬうちは無闇に鍼を打つことはならぬと師匠が毎度云って聞かしたことを思い出しましたから、是が戻天の所かも知れん、物は試しだ一番|行《やっ》て見ようというので、茂二作夫婦には毒薬をもって殺す時は死相が変って、人の疑いを招くから、愚老が研究した鍼の秘術で殺して見せると申して、例の通り療治をする時、半右衞門の左の乳の下へ思切って深く鍼を打ったのが
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