と手続きを申し立てるによって、その覚悟で居ってもらわんければならんが、宜しいかね」
 と調子に乗って声高《こわだか》に談判するを、先刻《せんこく》より軒前《のきさき》に空合《そらあい》を眺めて居りました二人の夜店|商人《あきんど》が、互いに顔を見合わせ、頷《うなず》きあい、懐中から捕縄《とりなわ》を取出すや否や、格子戸をがらりっと明けて、
 「御用だ……神妙にいたせ」
 と手早く玄石に縄をかけ、茂二作夫婦諸共に車坂の自身番へ拘引いたしました。この二人の夜店商人は申すまでもなく、大抵御推察になりましたろうが、これは曩《さき》に吟味与力吉田駒二郎から長二郎一件の探偵方を申付けられました、金太郎繁藏の両人でございます。

        三十七

 岩村玄石を縛りあげて厳重に取調べますと、此の者は越中国《えっちゅうのくに》射水郡《いみずごおり》高岡の町医の忰で、身持|放埓《ほうらつ》のため、親の勘当を受け、二十歳《はたち》の時江戸に来て、ある鍼医《はりい》の家の玄関番に住込み、少しばかり鍼術《はり》を覚えたので、下谷|金杉村《かなすぎむら》に看板をかけ、幇間《たいこ》半分に諸家へ出入をいたし
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