置いた炭団《たどん》を掻発《かきおこ》して、其の上に消炭を積上げ、鼻を炙《あぶ》りながらブー/\と火を吹いて居ります。お由は半纏羽織《はんてんばおり》を脱いで袖畳みにして居りますと、表の格子戸をガラリッと明けて入《は》いってまいりました男は、太織《ふとおり》というと体裁が宜《よ》うございますが、年数を喰って細織になった、上の所|斑《まんだ》らに褪《は》げておる焦茶色の短かい羽織に、八丈まがいの脂染《あぶらじ》みた小袖を着し、一本独鈷《いっぽんどっこ》の小倉の帯に、お釈迦の手のような木刀をきめ込み、葱《ねぎ》の枯葉《かれっぱ》のようなぱっちに、白足袋でない鼠足袋というのを穿《は》き、上汐《あげしお》の河流れを救って来たような日和下駄《ひよりげた》で小包を提《さ》げ、黒の山岡頭巾を被って居ります。

        三十五

 誰だか分りませんが、風体《ふうてい》が悪いから、お由が目くばせをして茂二作を奥の方へ逐遣《おいや》り、中仕切《なかじきり》の障子を建切りまして、
 由「何方《どなた》です」
 「はい玄石《げんせき》でござるて」
 と頭巾を取って此方《こっち》を覗込《のぞきこ》みまし
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