つ三つ穴の明いた古薄縁《ふるうすべり》を前へ拡《ひろ》げましたが、代物《しろもの》を列《なら》べるのを見合せ、葛籠に腰をかけて煙草を呑みながら空を眺めて居ります。
茂「やア道具屋さんも本屋さんも御精が出ます、何だか急に寒くなって来たではありませんか」
道「お帰りですか、商売|冥利《みょうり》ですから出ては見ましたが、今にも降って来そうですから、考えているんです」
茂「こういう晩には人通りも少ないからねえ」
本「左様《そう》ですが天道干《てんとうぼし》という奴ア商いの有無《あるなし》に拘わらず、毎晩《めいばん》同《おんな》じ所《とけ》え出て定店《じょうみせ》のようにしなけりゃアいけやせんから、寒いのを辛抱して出て来たんですが、雪になっちゃア当分喰込みです」
茂「雪は後《あと》が長くわるいからね」
と立話をしておりますうち、お由が隣へ預けて置いた入口の締《しまり》の鍵を持って来て[#「来て」は底本では「来って」と誤記]、格子戸を明けましたから、茂二作は内へ入り、お由は其の足で直《すぐ》に酒屋へ行って酒を買い、貧乏徳利《びんぼうどくり》を袖に隠して戻りますと、茂二作は火種にいけて
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