、一々長二に引合わせ、仏壇を見せて其の伎倆《うでまえ》を賞《ほ》め、長二を懇《ねんごろ》にもてなしました。

        四

 助「時に親方、つかん事を聞くようだが、先頃尋ねた折《おり》台所《だいどこ》にいたのは親方のお母《ふくろ》さんかね」
 長「いゝえ、お母は私《わたくし》が十七の時死にました、あれは飯焚《めしたき》の雇い婆さんです」
 助[#「助」は底本では「長」と誤記]「そんなら未だ家内は持たないのかね」
 長「はい、嚊《かゝあ》があると銭のことばかり云って仕事の邪魔になっていけませんから持たないんです」
 助「親方のように稼げば、銭に困ることはあるまいに」
 長「銭は随分取りますが、持っている事が出来ない性分ですから」
 助「職人衆は皆《みん》な然《そ》うしたものだが、親方は何が道楽だね」
 長「何も道楽というものあないんですが、只正直な人で、貧乏をしている者を見ると気の毒でならないから、持ってる銭をくれてやりたくなるのが病です」
 助「フム良《い》い病だ……面白い道楽だが、貧乏人に余《あんま》り金を遣りすぎると却《かえ》って其の人の害になる事があるから、気を付けなけれ
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