せんから、是はお預け申して置きます」
助「左様いう事ならお預かり申して置きますから、御入用《ごいりよう》の節は何時《なんどき》でも仰しゃってお遣《つか》わしなさい」
と金子を懐中に納めまして、
助「これはお仕事のお邪魔を致しました……そんなら何分《なにぶん》宜しくお願い申します、お暇というはございますまいけれど、自然浅草辺へお出での節はお立寄り下さい」
と暇《いとま》を告げて助七は立帰り、翌日桑の板を持たせて遣りましたが、其の後《のち》長二から何《なん》の沙汰もございません。助七は待遠《まちどお》でなりませんが、長二が急いではいけないと申した口上がありますから、下手に催促をしたら腹を立つだろうと我慢をして待って居りますと、七月目《なゝつきめ》に漸々《よう/\》出来上って、長二が自身に持ってまいりましたから、助七は大喜びで、長二を奥の座敷へ通しました。此の時助七は五十三歳で、女房は先年|歿《なくな》って、跡に二十一歳になる忰《せがれ》の助藏《すけぞう》と、十八歳のお島《しま》という娘があります。助七は待ちに待った仏壇が出来た嬉しさに、助藏とお島は勿論、店の番頭手代までを呼び集めて
前へ
次へ
全165ページ中14ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング