れるから、先へ帰れと仰しゃいましたから、私《わたくし》はお新造より先へ帰りました」
 奉「柳の実家《さと》と申すは何者じゃ、存じて居《お》るか」
 茂「へい八王子の千人同心だと申す事でございますが、家《うち》が死絶《しにた》えて、今では縁の伯母が一人あるばかりだと申すことでございますが、私《わたくし》は大横町《おおよこちょう》まで送って帰りましたから、先の家《うち》は存じません」
 奉「其の方の外に一緒にまいった者は無いか」
 茂「はい、誰《たれ》も一緒にまいった者はございません」
 奉「黙れ、其の方は上《かみ》に対し偽りを申すな、幸兵衛も同道いたしたであろう」
 茂「へい/\誠にどうも、宅《うち》からは誰《だれ》も外にまいった者はござりませんが、へい、アノ五宿《ごしゅく》へ泊りました時、幸兵衛が先へまいって居りまして、それから一緒にヘイ、つい古い事で忘れまして、まことにどうも恐入りました事で」
 奉「フム、左様《さよう》であろう、して、柳は幾日《いくか》に出て幾日に帰宅をいたしたか存じて居ろう」
 茂「へい左様……正月二十八日に出まして、あのう二月の二十日頃に帰りましたと存じます」

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